幻想フリーテーション
作者: 零雅◆w5dHlYLuiWA   2011年06月19日(日) 20時01分59秒公開   ID:Uv1fa9verDs   ジャンル:なんでもあり

戯れ ―1




ピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ――カチッ。
目覚まし時計を叩いて止め、布団のなかで寝返りをうってから勢いよく起き上がる。
時刻は8時ジャスト。いつもなら朝食を摂っている時間かもしれない。
が、まあ、今日は朝から旅行なはずだ。旅行の朝くらいいつもより多く寝ていてもいいはずである。
「それでも腹は減る」
起き上がって朝食でも作るかなートーストにしようかなサンドイッチにしようかなーなどと考えていると、ケータイに着信を知らせる振動。
「はいもしもし」
「うーい。おはようゆっくん。そろそろ朝御飯の時間でしょー?」
・・・・・どんだけタイミングいいんだこいつは。
どっかから覗いてんじゃないだろうな。
「あー、まあそうだけど。何の用か?」
「よかったらこっち来てウチで朝食食べていきなよー。腹が減っては戦はできんよ。」
こやつ今から戦をする気なのだろうか。
朝から騒がしい奴だと思う。
「旅行と戦を一緒にするんじゃないよ・・・まあ、じゃあ行かせてもらおうか。何時ぐらいに?」
「うにゃー、じゃあ今すぐ。じゃ待ってるよん」
ブツリ、と、電話が切れた。
確かに、これから旅行にいくのだから、渚の家でいつもより多めの朝食を採って体力をつけたほうがいいかもしれないな。
僕は荷物を詰めたリュックと旅行鞄を持って、目の前の門をくぐった。





「・・・・・お前、いつもこんな朝食摂ってんのか?」
「まあね。え、てゆーかゆっくんは違うの?」
「普通は違うんだよ・・・・・」
目の前に並べられた、明らかに食いきれないであろう量の“朝食”を前に、僕は嘆息する。
これと比較したら、僕の朝食はもっての他、昼食や夜食の量だってこんなには・・・・・
・・・・・・・・・・。
まあ、比較しないでおこう。
「それより渚、準備とかは済んでるのか?」
話の方向を変える為に、何となく思った事を口にしてみる。
渚は「うん」と頷き、
「ゆっくんは?」
「ああ・・・まあ、ある程度はね。普通の旅行に行くには困らない程度の準備はしてある」
「普通の・・・旅行?」
・・・?
僕は何か変な事でも言ったんだろうか。
「それじゃあマズイよゆっくん。今から行くのはただの旅行じゃないんだよ?」
「・・・・・・・・・・?」
どういうことだ?
「そりゃあ前もって旅館みたいな所とかキャンプ場みたいな所とかは作ってあるけどさ。他は全部原生林だし、何より食料だって持っていく分しかないんだよ?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
「だから獲物をとる為の刃物か銃は必携だね。あとは食料を入れるおっきい鞄と鈍器とナイフと」
「ああごめん今日は用事があったんだったちょっと失礼」
「待ってよ待ってよ!昨日何にもないって言ってたじゃん!」
「・・・・・・・・言ったっけ」
「言った」
相変わらず都合のいい場所だけ覚えおって。
周囲に目をやると、メイドさんが困ったような笑みを浮かべた。
・・・・・・・・・・。
・・・・・・・・・・ああ。
あなたたちも巻き込まれた訳ですね。
「わかったわかった。じゃあ準備して来るから首に手を回して力を込めないでくれ死んでしまう」
「本当?」
「ああ本当」
「嘘だったらゆっくんの家爆破するからね」
「必ず約束を守ろう」
こいつなら本気で爆破しかねないから怖い。爆薬とかぐらい軽く持っているのだろう。
一旦家に戻り、武器になりそうなものを探す。包丁、大きめのナイフ、鋏。
このくらいしかないな。
渚に電話すると、「じゃあ火器はこっちで貸すよ」との事だった。
相変わらず怖い事を平気で言うやつだ。
火器なんて物騒なモン持ってんのか。
「じゃあすぐに戻って。もう時間だから」
渚の声を聞きながら目の前の豪邸を見れば、ヘリコプターが停まっていた。
はいはい、と相槌を打って電話を切る。
よく見れば大量の荷物も積まれているではないか。
・・・・・・・・・・おお。
本気でサバイバルの旅行らしい。
微かな楽しみと沢山の不安、恐怖、心配を胸に、僕はメイドさんにエスコートされてヘリコプターに乗り込んだ。
■作者からのメッセージ
どうも、お久しぶりです。
・・・なんだか掲示板が過疎化してきている気がしなくもありませんが、とにかくうpしてみましょう。周りからの反応はどうなんでしょうか。後生ですから「今更かよウスノロ」とか「ああもうあんたはいいよツマラネエ」とか言わないで下さい。零雅が自殺してしまいます。
さて久々の更新になりましたが、いよいよ本編ですね。
これから彼らは渚が買収した島に行くことになります。島ではいろいろなアクシデントを含む事件を起こすつもりでいるので、お楽しみに。
では、また次の機会があればお会いしましょう。
少なくとも、零雅が小説を放棄しなければ会えるはずです。
それでは。

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