幻想フリーテーション
作者: 零雅◆w5dHlYLuiWA   2011年05月27日(金) 14時51分42秒公開   ID:Uv1fa9verDs   ジャンル:--




僕は現在進行形で、バッグに衣服類を詰め込んでいた。
明日は旅行である。もっと詳細を言うならば、大金持ちの幼馴染が島を一つ買い占めたので、そいつに便乗して島を見に行く、と言ってもよい。
「しかし島一つとは…さすがに驚き」
昔から幼馴染――《初咲 渚ういさき なぎさ》の金の無駄遣いっぷりはとくと見てきたが、スケールもここまで大きくなるともう唖然とするしかない。
奴の他に、誰が島一つ買うやつがいようか。
「…まあそのお陰で助かってるんだしとやかく咎めはせんが」
というのも、僕が渚から金を借りている―というのも貫禄ないので、渚が僕に金を貸してくれている、とでも言い換えておこうか(大して差異もないが)。
要するに生活費の一部を、渚が負担してくれているのだった。
ありがたいのだが、その『お金くらいなら』という態度に苛っとくる時もある。
ちなみにその渚はというと、僕の住んでいるボロっちい一軒家の真ん前に、巨大な豪邸を築いて住んでいる。
本人曰く「ゆっくんの近くにいたいから」だそうだが、そんなもんこっちにしてみればただの嫌味だ。目の前の屋敷を眺めながら一人でご飯を食べる時の気持ちも考えろと言いたい。言って今更どうにかなる問題ではないので言わないが。
とまあそれはさておき。
「さて明日は」
予定の確認。そういえば詳しく見てなかったな、と思いながら予定表を眺めてみる。ちなみに予定表は渚自身が作ったらしく、手書きである。
ふむふむ、現地到着が10時で集合はやつの豪邸、集合時刻は9時…
「…って遅くねえか」
さすがに1時間はねえだろ、と思うが、ああ、あいつが金持ちであることを忘れてはならない。どうせ地上を走るのではなく、上空を飛んでいくのだろう。
「では明日も大変なので就寝就寝」
別に大変というわけでもないが、まあ旅行というならば多少お洒落してもいいだろう。もっとも自分にそんなセンスがあるとは毛頭思わないが。
電気を消し、布団に入ったところで、ケータイが振動した。メールの着信らしい。
開いてみると、案の定、それは渚からのメールだった。


FROM:初咲 渚
件名 明日の件

本文
あしたの集合時間を9時30分に変更だよ!
というわけでゆっくりお休みなさい。寝不足は健康によくないよ!
じゃあまた明日♪

  ----------------END-----------------


…マジで間に合うのかあの野郎。
まあ行く先が行く先だから、多少時間にずれが生じても構わない、といった所だろう。
そして僕は、本当に眠りについた。

■作者からのメッセージ
前作を読んでくださった皆様、申し訳ありません。
そして改めて今日は、零雅です。

今作は前作と違い、ファンタジー色はあまり濃くありません。というかむしろすんごい希薄です。
といっても恋愛ではなく、かといって学園モノでもなく、言うなれば《普通な》物語だとおもって下さい。
あまり平凡すぎても欠伸がでるだけなので多少のアクションや事件も含みますが、それ以外は基本的に普通な物語であります。

では、自分はこの辺りで。
読んでくださる皆様に感謝の念を。
では。

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